くまのめせん 008 [コピーバンドからヒントを得る]

  • 2012/03/20
  • PLANNING

くまのめせん、008です。ギャー。もう3月。
卒業の月です。花粉症からも卒業したい。
そして、4回生のみなさま、ご卒業おめでとうございます。

 

今日は去年僕の授業で行った
「公募に出しまくるのだ。そして賞をとるのだ。なんとしても」
について書きます。僕の教えている19歳、20歳の美大生は、
それはそれは感受性が高く日々いろいろな課題をこなしたり、
自分の作品をつくり続けることで自分と対話して、オリジナリティー
溢れる作品をつくろうとがんばっています。

 

でも、そのほとんどが発想したことや作品をつくる初期のころは
楽しかったりするのですが、作品としてできあがると、なんとなくの
一般的な「作品」ライクなものとなり、一気に魅力が80%くらいダウンしちゃいます。

 

これは何でなのかなーと考えていたのですが、
「作品とはこうでなくっちゃ、こんな感じでまとめないとダメだ」っていう
概念に縛られてるのかも?と分析してみました。
で、なんでそういう風に考えちゃうのかな?とより突っ込んで考えてみると、
独学での作品作りの思考プロセスしか知らないから、最終的にアウトプット
されたものに対して自信が持てないんじゃないかと。

 

もしその仮説があたっているとすれば、これはバンドでいうところの
既存アーティストのコピーをやることで、制作プロセスにおける
構造の気づきや、自分とは違う作り方の存在などを見つけることが
できるのではないか。と考えました。

 

でも、単にコピーしても制作途中での個々の気づきをまとめることなんて
難しいし、結果で考えれば、それが出来たときにコピーした対象と比較して
上手、下手くらいの評価くらいしかできないなーと思いました。

 

そこで、コピーじゃないけど、人の作品を分析して自分のオリジナルという
フィルターはできるだけ意図的に排除して作品を作ってみることで、
コピーと同様のプロセスを体験できるのではないかということで、それを
コンテストに応募することで、試してみることにしました。

 

お題は、
「自分の作家性を封印して、過去の受賞作を徹底分析した後、
コンテストに応募。確実に賞をとる」

 

まずは、気の合う仲間でグループを作って、それぞれ得意な分野で
何か賞を取れそうなコンテストを探すところからはじめました。
画が得意なグループ、企画が得意なグループ、ガーリーな世界が好きな
グループなど、それぞれがリサーチして応募先を選び、過去の受賞作品や
審査員の情報などをまとめていきます。そして次に受賞作を構成している
要素や、審査員の好みの特性などをまとめていき、戦略を立てます。

 

そんなことを書いていると、大変つまらない創作のように感じますが、
面白いもので、学生はそれをゲーム感覚で面白そうにこなしていきます。

 

そして1次プレゼン。各々のグループが戦略を元にしたラフの作品を
発表します。まだこの時点では荒削りな状態なのですが、
発表したグループのプレゼンを聴いていた学生に対して、
「これで賞取れると思う?もっと考えるとすると、もっと触るとすると
どんなところかな?」と聞くと、結構コメントが返ってきて発表した
グループは、それをブラッシュアップのヒントとしてメモします。

 

こういう発想は、多分「自分のオリジナル作品」を作っているという
モードの時には出てこないもので、ある種それが「創作」というより「作業」という
感覚に近いからできるのかもしれないですが、そこからの「創作」に対しての
感覚的なフィードバックは後から聞くと少なからずあったようです。

 

そんな作業を2、3回繰り返して、全グループ何らかのコンテストに多数応募して
待つ事1ヶ月。僕の携帯にちらりほらりとメールが入りはじめます。

 

「当選しました!めっちゃうれしい!」
「特別賞もらいました!授賞式が南の島で、しかも招待してもらえるんです!」

 

などなど。結果は出た様子です。

 

普段の自分の創作のプロセスとは違う方法でものを作ってみることで、
彼らは確実に「自分のオリジナル」とはどんなもの?どうやってつくるの?
への答えに一歩近づいたように思います。
作品ぜんとしたものをつくるのではなく、自分のものをつくる。
そのつくりかたのヒントを、ちょっとだけつかみ取ったように感じました。

 


line

Back to top